鉛レス合金
説明
生型鋳造法の鋳型づくり 鋳造実験の注湯工程 鋳型ばらし後のテストピース 切削実験により合金の加工性を分析
生型鋳造法の鋳型づくり
生鋳造実験の注湯工程
鋳型ばらし後のテストピース
切削実験により合金の加工性を分析

人に地球にやさしい鉛レス合金の開発

 高岡銅器と鉛というとピンとこないかもしれないが、銅合金にはある割合の鉛成分が含まれている。だが近年、鉛の毒性による人体への影響や環境汚染が問題化。確かに鉛は、融点が低く加工性に優れるため、電子基板のハンダや合金メッキなど、その用途も幅広い。しかし、破棄された製品から土壌に溶け出す危険性もあり、消耗品・量産品のメーカーを中心にリサイクルや代替素材へのシフトが進められている。現在のところ、銅製品において鉛の使用を制限する動きはないものの、将来の規制拡大も懸念されることから、高岡銅器でも新素材の研究・開発は緊急の課題といえよう。こうした時代の趨勢に応えるべく、高岡市デザイン・工芸センターの呼びかけにより「鉛レス素材開発研究会」が発足した。平成11年7月22日には、高岡銅器の14業者が集まり、鉛を含まない銅合金の実験が開始された。
 銅合金は、製品によって配合がさまざまである。高岡銅器の主流は、銅60〜70%と亜鉛30〜40%に、約2%の鉛を加えたものだ。このうち、鉛に代わる成分として「スズ」「アンチモン」「ビスマス」「シリコン」を配合。各合金の特性を従来のものと比較しながら分析する。鋳造実験では、生型鋳造法とシェルモールド鋳造法により試験用のテストピースをつくり、各合金の湯流れ粘度や膨張によるピンホールの発生などを調べた。また、着色実験では、さまざまな着色法によって塗膜の表情や結晶の浮き出し方を比較。着色に関しては、青銅色の場合、すべての合金が従来と同質に仕上がることがわかった。この後、切削や強度などの実験を重ねながら、必要に応じて成分の配合を調整。鋳物素材としての完成度を高めていく。
 研究結果は、高岡銅器の関係者をはじめ広く一般に公開。現在、研究結果やコストなどをトータルに検討しながら、「鉛レス合金」による新商品の開発を進めている。